アジアのお化けがパリに大集合!? ”ENFERS ET FANTÔMES D’ASIE(地獄と幽霊展)”

パリにあるケ・ブランリー博物館では現在一風変わった展示会が開催されています。

その名も、”ENFERS ET FANTÔMES D’ASIE(アジアの地獄と幽霊展)”。

おやおや?どこかで見たことのある妖怪や幽霊たち?日本でお馴染みのお化けたちの様にも見えます。どんな企画展なのかどうしても気になったので、早速子どもたちを連れて行ってみました。

まず企画展の入り口から幽玄な雰囲気が漂っています。灯篭の朧気な雰囲気がなんとも怪しげな通路を通って地獄にいざなわれます。

目次

お化け界のスーパースターが大集合

さて、展示内容はまがまがしく、アジアの有名お化けが大集合しなかなかに見ごたえがありました。特に日本のお化けに関する展示は今回の展示の核となっており、全体の半分ぐらいを占めていました。閻魔大王、鬼など仏教をベースとするものや、四谷怪談のお岩さん、番町皿屋敷のお菊さんなどの有名幽霊たち、がしゃどくろや化け猫、百鬼夜行などの古典的な妖怪だけでなく、ゲゲゲの鬼太郎、映画『リング』の貞子なんかも登場します(笑)まさに、日本のお化け界のスーパースターが一堂に会しています。

また展示物も葛飾北斎や歌川国芳の超有名な浮世絵なんかもあって、「おお!この絵見たことある」というものがいくつかありました。日本でもなかなか見る機会がないものたちです。

(歌川国芳「相馬の古内裏」アルバート美術館所蔵)

こちらは葛飾北斎のお岩さん。ちゃんと北斎の版画の原画を見ることができるのですが、私は小心者なのでお土産品のみ撮影です・・・。

個人的に面白かったのは水木しげるさんの原画。こちらは小豆洗いです。NHKの朝ドラ「ゲゲゲの女房」でもこの絵を書くシーンがありました。鉛筆書きは水木さんの直筆なのでしょうか?ドラマファンとしては気になります(笑)

また日本だけでなく、中国、タイなどのアジア諸国のお化けコーナーもなかなか面白かったです。

非常に懐かしいところで行くと「キョンシー」。私が子供のころ毎週テレビにかぶりつきで見ていました。この等身大キョンシーはドラマ版より顔が怖い。。。

それにしてもキョンシーなんてヨーロッパの人わかるのかしら?ともったら、ちゃんと「キョンシー」を知らない人のためにドラマ版の映像が会場の片隅で上映されていました。久しぶりに見る「キョンシー」はやっぱり面白い!お笑い要素たっぷりでありつつ、カンフー要素もあり、今見ても楽しめる娯楽ドラマでした。またどこかで再放送しないかなあ。

子どもたちも初めて見る「キョンシー」と導師のコミカルなやり取りに大笑い。全ての展示の中で子どもたちに一番強い印象を残したようです。

出口では仏様の像に見送られ、一応拝んでなんちゃってお清めをして(?)無事に俗生へ戻ることができました。日本人としては最後に仏様を見ると何気にホッとしますね。あ~助かったあ、出てこれたあ。

フランス人から見たアジアの地獄観

この展示を見て面白いなと思ったのが、キリスト教と仏教の違いから「地獄観の差」です。

欧米人の視点で幽霊や地獄をみてみると、キリスト教的な天使と悪魔といった「善と悪」の対立はアジアにもあるのですが「そこはかとない怖さ」「輪廻するなかでの業」「なんだかわからないけど怖いもの」といった要素がアジアにはあると知ることができました。

会場内の説明文には

仏教の世界は「諸行無常」という世界観がある。この世のものは神も人も生き物も欲望すべて一時的な仮のものである。地獄は輪廻転生をするまえに、生前の過ちを苦しみ償う煉獄である。

引用:“Enfers et Fantom D’Asif

 

とありました。「諸行無常」や「輪廻転生」は現代日本人にとっても大分遠い感覚にはなってきたものの、一応何となく世界観として今も少しは共有されています。そうしたものは日頃意識することはありませんが、改めて外国人目線で指摘されると日本人としてのアイデンティティや共有している価値観や世界観を再認識することができます。

実は展示品としては一級品の浮世絵や絵画だけでなくお土産品、おもちゃレベルのものも含まれおり、日本人としては首をかしげるところもありました。それでも、そうしたものも含めて外国人がどんなものに興味を持ち、そしてアジア独特のものなのかを知る良い機会となりました。

子どもへのおススメ度は・・・?

さて、おどろおどろしくもアカデミックで、でも大衆文化から見た「アジアの地獄と幽霊展」、大人も子どもも予想以上に楽しむことができました。

ただ、注意点は日本で同様の展示をするよりもより「グロイもの(エロいものも含む)」が隠さず展示されていることです。なので、低学年以下はちょっと注意が必要かもしれません。うちもトラウマになりそうだから「見ちゃダメー」と目を覆った場面もありました(特に日本以外のもの)まあ、日本がそういうドロドロしたものとか、まがまがしいものからあまりに子どもたちを遠ざけすぎているのかもしれませんが・・・。それでも地獄は「暴力的なもの」と少し隣り合わせの部分もあるので、一応子連れの方は頭の片隅に置いておくと、良いかもしれません。

何より親子連れを含むたくさんのフランス人が足を運んでいて、日本やアジアの文化に興味を持ってくれている人が多くいることをしれたのは日本人として少し誇らしい気持ちになりました。

親子で日本を再発見するのには良い機会となりました。

 

 

ケ・ブランリー博物館 「アジアの地獄と幽霊展」

2018年4月10日~7月15日 開催