パリの幼稚園の子どもが「初めて」見る映画
フランスの幼稚園では学校内だけでなく、劇場や映画館に行って本物の芸術に触れる活動が盛んです。5歳の次男が通っている幼稚園でも月に2カ月に1回ペースで芸術鑑賞のアクティビティーが行われています。先日も映画鑑賞会があり、幼稚園からメトロに乗って映画館に行ってきました。わたしも引率のお手伝いで同行させていただいたので、その時の様子をご紹介します。
「はじめての映画」プロジェクト
今回子どもたちが参加したのは”Mon 1er Cinema(私の初めての映画)”というパリ市が主催するプロジェクトです。子どもたちに様々な映画を体験してもらおうと2008年から始まったプロジェクトだそうです。子どもたちは幼稚園を出て、実際に町の映画館で映画を鑑賞します。
この日も区内の幼稚園児が何クラスか集まってきていました。学校単位というよりはクラス単位なので、色んな幼稚園の子どもたちと一緒に鑑賞します。
プログラムにはちょっとしたレクチャーもあり、子どもたちに映画館に親しんでもらうとともに、映画への興味を喚起するプログラムが用意されていました。
今回は幼稚園向けでしたが、小学生向けには”ecole et cinema(学校と映画)”と呼ばれる小学生を対象とした映画鑑賞プログラムがあります。小学生が対象ですが、フランスの幼稚園の年長さん(Grand Section5~6歳児)からこのプログラムが始まります。
1994年に始まったこのプログラムはクラス、学校単位の申し込み制で2015/2016年度でフランス全土で10,176校、89万人の児童が参加しています。フランスの芸術鑑賞は映画だけでなく、劇なども盛んなので毎年それぞれの学校でプログラムを決めて申し込むようです。
どんな映画が上映されるのか?
さて、実際の上映会ですが、今回は年長さん向けに「オオカミ」をテーマにしたショートムービーを集めた”Promenons-Nous avec les Petits Loups(小さなおおかみと歩こう)”が上映されました。
オオカミが登場する10分程度のお話を6本集めたショートムービー集です。フランス製作のものだけでなく、ロシアや韓国など外国の作品もありました。映画学校で作られたものもあり、様々なテイストの映画を楽しむことができました。
「オオカミ」というテーマも面白く、
オオカミは本当に大きくて悪いヤツだって本当?君はオオカミがダンスをしたり、パパみたいに子育てをする話を聞いたことがあるかな?オオカミの色んな面を発見するユーモアと驚きの6つのアニメ物語…おびえたオオカミを追いかけるものは?
http://www.enfancesaucinema.net/mon-1er-cinema/la-programmation-2017-2018/58.html
という説明の通り、時にはお友だちの人間のためにわざとつかまるオオカミや、悪いことはしていないのに人間に追いかけられるオオカミ、あるいは小さな小鳥との出会いと別れだったり、ステレオタイプでないバラエティに富んだオオカミのお話たちでした。大人が見ていても笑ったり、ほろりとしたり、確かにオオカミっていつも悪者として登場するけど、本当にそうなのか?と違う視点を持たせるのは良い試みですね。
また、小さな幼稚園生でも理解できるように、セリフがない映画も何本か上映されたので、言葉がわからない私たち親子でもそれなりに楽しめました。実は何もわからないまま1時間がすぎたらどうしようと、心配していたので(笑)
ちなみに一番子どもの反応が良かったのは7匹の子ヤギのタイトルが流れた時は子どもたちも声をあげて大歓声。こちらは定番の悪者オオカミですが、みんなが知っているお話が1つあると盛り上がります。やっぱり子どもは知っているお話しを聞いたり見るのが大好きですね!
フランスでの映画鑑賞をするときのマナー
さて、今回引率して気になったのは、どこまで騒ぐ子どもたちを注意した方が良いか、です。私も遊びに行ったわけではなく、一応引率なんでね、その辺はちゃんとしないといけないんですよね。
結論としては、ほぼ日本と同じぐらいか、もう少し厳しいか、という感じでしょうか。息子のクラスの子たちが興奮してしゃべり始めたり、立ち上がったりすると、先生からすかさず厳しい叱責が飛んでいました・・・。やはりこちらの先生は叱るときはかなり厳しめに叱ります。諭すというよりはピシャリと𠮟りつけるのでちょっとかわいそうなぐらい。
やはり同じ幼稚園の子どもたちばかりではないので、この辺はマナーとしてきちんとしつけられるようです。
あと、子どもたちの中にも「静かにしなくちゃダメ!!」と優等生タイプの子がいて、周りの子が少しでも騒ぐと、「シーーーーーーー!!」と注意している子もいました。その子の「シー」の音のほうが大きいのですが、本人なりに一生懸命なんですよね(笑)
公共の場で静かにすべき、というのはフランスの共通認識なんだと改めて感じました。
また、ちょっとおもしろいなと思ったのは、ショートムービーが一つ終わるごとにパラパラと拍手がおきることです。これは先生がやっているのか、それとも子どもがやっていたのか、真相はよくわかりませんが、作品にたいして経緯を払う姿勢は素敵ですね。
さて、今回初めて幼稚園の課外芸術アクティビティを引率して、私自身もなかなかおもしろかったです。最近、日本でも生の芸術を見る機会はずいぶんと減ってきているように思いますので、こうした活動が日本でも根付けばいいのになと思いました。
画像出典:http://fr.web.img6.acsta.net/pictures/16/05/30/16/17/420807.jpg