パリの現地校に通うフランス語が話せない子どもの特別クラス UPE2A(パリ16区の場合)

現地小学校に通い始めて1週間。子どもは楽しそうに通っていて順調と思いきや、フランス語力が足りずフランス語を母国語としない児童のための特別クラスがある学校への転校を勧められました。

幼稚園でできたお友達と泣く泣く分かれての悩みながらの転校ですが、そもそも「フランス語が話せない子どもの特別クラス UPE2A」ってどんなところなんでしょうか?

今回は入学手続き、学校の様子など体験談をご紹介します。

目次

フランス語が話せない子どもの特別クラス UPE2A(旧CLIN)とは

UPE2Aとはフランスを母国語としない児童・生徒のための特別クラスです。

対象年齢は6歳以上で幼稚園にはUPE2Aはありません。

小学校の場合、学年を問わず異なる年齢の子たちが同じクラスでフランス語を中心に学習をします。子どものレベルによっては算数、音楽、体育、美術といったあまりフランス語を必要としない授業の時間は本来の学年に戻って学習することもあるようです。

パリも移民が多く暮らしていることもあり各区ごとに数校ずつ設置されています。

パリ市内でUPE2Aが設置されている学校の一覧 2017/2018年度

全ての学校にあるわけではなく、場合によっては自宅から距離のある学校に通わなければならないケースもあるようです。

なお、パリ16区の場合は以下の4校が該当校です(2018年9月現在)

  • École primaire Murat
  • École élémentaire d’application la Fontaine
  • École primaire publique Bauches
  • Ecole élémentaire Saint-Didier

 

このUPE2Aは以前はCLINと呼ばれていましたが2013年以降名称が変更されています。

ただ、いまだに役所の窓口CLINで通じるようですし、先輩日本人に相談するとCLINという名前でそうした制度を教えてもらいました。この制度や経験談について詳しく知りたい場合は両方の名称で検索してみるとより多くの情報を得られるかもしれません。

UPE2Aの入学手続き

さて、UPE2Aの入学手続きですが通常の学校と同じプロセスとなっています。

以下は、パリ16区の場合です。

UPE2Aに通うための手続きの流れ

  1. まず、役所に出向き必要書類(家族全体証明[日本の戸籍謄本に相当]、居住を証明する書類[電気料金の請求書等]、パスポートなど)を提出し保護者と児童の情報を登録
  2. 学校の決定(通常、窓口の担当者が指定)
  3. 学校の入学許可書の発行
  4. 年収に応じた給食費、学童の利用料のレート決定
  5. 校長先生との面談

普通校との違いは、2の通学する学校の決定です。初めてパリの学校に通う場合は、窓口の人の判断で普通校かUPE2Aのある学校か指定されるようです。フランス語が話せいないと判断されるとUPE2Aになります。

なお、初めてパリ市内の学校に通う際の手続きは以下の記事をご参照ください。記事は幼稚園入学手続きについて書いてありますが、小学校もほぼ同じ手続きになります。

関連記事:パリ市内の学校の入学手続きについて

普通校からUPE2Aへの転校もありうる

窓口の判断で普通校に通うことになった場合では、学校の先生が「この子はフランス語の授業についていくのは難しい」と判断すれば学期の途中でもUPE2Aに転校することがあります。

我が家の場合も幼稚園から現地校だったので特にUPE2Aの指定はなく1年間通ったあと、一旦普通校のCP(小学校1年生)に進学したものの、すぐに新しい担任の先生に「フランス語のボキャブラリが少なすぎる」ということであえなく転校となってしまいました。

親としては元々、幼稚園の先生の判断や校長先生の面談を経て小学校に入学したのに、すぐにそれを覆されて若干不満もありました。ですが長い目で見たら同じようなレベルの子どもたちとUPE2Aでフランス語の基礎を教わる方が本人にとっても良いのかなと考え、転校を受け入れました。

なによりまだ日本では幼稚園生の年齢です。学校が苦痛の場所ではなく、楽しい場所であってほしい、という思いが大きかったです。

UPE2Aと普通クラスの違い

さて、UPE2Aではどんな学習をするのでしょうか?

まだ次男はまだ通い始めるところで追って詳細をアップデートしますが、まずは私自身が「フランス語が話せない親のためのフランス語講座」をUPE2Aのクラスで受けていた時に知りうる範囲でご紹介します。

まず、生徒たちはみな外国から来た子どもたちばかりで、国際色豊かです。

我が家が通うクラスは10数名と、CPの普通クラスが24人前後なのと比べて少人数で学ぶことができます。

学年を超えてフランス語初心者の子どもたちが通うので、兄弟で同じクラスになることも多いようです。

UPE2Aに通っていた知り合いのお子さんの話を聞くと、兄弟で通う場合は勉強も助け合えるし孤立することも少ないので比較的スムーズに通うことができたようです。

また、UPE2Aでの勉強は主にフランス語が中心。

特に元々フランス語の学校はCPぐらいの時はフランス語と算数の学習に重きにおいているので、日本のように低学年のうちから「生活(理科・社会)」もまんべんなく勉強するというわけではありません。

さらにUPE2Aで学ぶ子たちは早く学年相当のクラスに合流することが望ましいので、UPE2Aではフランス語を重点的に学ぶようです。

私が小学校のUPE2Aの教室でフランス語を学んでいたときも、教室内に etre や avoir といった超頻出動詞や un/une など絶対覚えなければならない冠詞が教室にぺたぺた貼ってあり、子どもたちが忘れてもすぐに確認することができるようになっています。

また、机には曜日や月などの基本単語やアルファベットの大文字、小文字、筆記体といつでも確認できるシートが一人一人の机に用意されていました。

逆に普通クラスではCPでもそういったフランス語の助けになるものはほとんどありません。

日本でも小学校1年生レベルの子どもなら、ひらがなが読める読めないはあるにせよ、ほぼ曜日、月なんかは口頭でスラスラ言えますもんね。 そういった「当たり前」が全く身についていない外国人の子どもにはやはり普通クラスについていくのは非常に大変なことだと感じます。

そういったフランス語初心者細かい配慮や学習の手助けとなる環境が普通クラスとUPE2Aの大きな差と言えそうです。

というわけで、フランス語が母国語でない子どものための特別クラス、UPE2Aについてご紹介しました。

フランスの教育システムは日本と異なるところもありますが、飛び込んでみると母国語でない子どもたちをフォローも整備されていると感じます。外国語の環境で学ぶことは大変ですが、様々な国籍の子どもたちの中で、色んな経験を学んでいってくれることを願っています。

Photo by Peter Hershey on Unsplash

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