フランスの朝のテレビ番組はアニメだらけ
フランスに来て驚いたのは朝6時台から8時台まで主要チャンネルで幼児向けのアニメしか放送していないことです。今日は実際、どのぐらいフランスの朝の番組がアニメだらけなのかを検証します。
朝、テレビでニュース番組がやっていない!
日本で朝のテレビといえば、例えば首都圏の場合では、教育テレビ以外のすべてのチャンネルが何らかのニュース番組か大人向けの情報番組を放送しています。8時以降になると、家族を送り出して手の空いた主婦向けのワイドショーや情報番組一色になります。ある意味どのチャンネルを回しても似たようなニュースばかりですが、時事ネタ、暮らしの小技ネタ収集にはそれなりに役に立っていました。
ですからフランスに来ても日本と同じ感覚で、庶民の生活ぶりや社会など現地でしかわからない情報を得たいとテレビをつけました。ところが、どのチャンネルを回してもアニメばかり放送しているではありませんか!そのときは「あれ?チャンネルの探し方が悪いのかな?」と思い、また次の日にチャレンジすることにしました。というのも、当時はフランスに来た間もなくホテル暮らしだったため、ホテルが提供している数十チャンネルを見ることができたのです。
きっと私が知らないだけで、CNNやBCCのような一日中フランスのニュースを伝えるテレビ局があるに違いないとその時は思っていました。でもチャンネルをいくら変えてもみつからない!!これでは、何がフランスで起きているのか全然わからない・・・。
(2019年1月17日追記:ちなみに1年ぐらい経ってやっとわかったのですが、有料チャンネルのBFM TV(チャンネル15)などではCNNのように24時間365日ニュースを放送しているチャンネルがちゃんとあることがわかりましたが、フランス語の問題もあり、それだと気が付くのに大分時間がかかってしまいました・・・)
国営放送ですら朝はアニメを流している
フランスではインターネットとセットでテレビを契約する人が多く、無料で見られるチャンネルは4つしかないのだそうです。しかもそのうち3チャンネルがフランス・テレビジョンという国営放送のチャンネルなのだとか。残るTF1は民放の位置づけですが、元々はこちらも国営放送です。契約せずにみられるチャンネルはこのいずれかのテレビ局による番組になります。
試しに朝7時半ごろ、この4つのチャンネルを順番に回してみると以下の結果となりました。
- チャンネル1(TF1) アニメ
- チャンネル2(フランス・テレビジョン:総合放送) ニュース
- チャンネル3(フランス・テレビジョン:地域情報) アニメ
- チャンネル5(フランス・テレビジョン:教育テレビ)アニメ
なんと4チャンネル中1つを除いて、すべてアニメを放送しているではありませんか!
フランスでは日本の様に地域のテレビ網は発達していないので、フランス全土で全く同じ番組が放送されるそうです。ということは、フランスの朝の時間帯はアニメばかりが放送されているということになります。
幼児向けのアニメばかりを放送している
さて、誰もが見られる国営放送と民放が朝のゴールデンタイムにアニメを積極的に放送しているということがわかりましたが、どんな番組を子どもたちは見ているのでしょうか?
TF1(チャンネル1)
民放のTF1では朝6時25分から8時25分までがTfouという子ども向けの枠を持っています。2時間すべてアニメが放送されます。ちなみにフランスの小さな子どもに大人気なカナダのPOW PATROLという救助犬の話や、米中韓共同で製作されているSuper Wingという飛行機が主人公のアニメが放送されています。どちらも主人公のキャラクターが街を守るというヒーローもので、男の子が好きそうなアニメです。
France3(チャンネル3)
国営放送のフランス・テレビジョンFrance3でも朝は6時から8時頃までひたすらアニメを放送しています。France3で良く見かけるのは”Grizzy and the Lemmings”というフランス製作の番組。カナダと思われる森に棲むハイイログマのGrizzyといたずら大好きなLemmingsという小さなネズミのような生き物たちのドタバタコメディです。身体の大きな熊のGrizzyが小さなLemmingsのいたずらに振り回される姿がなんとも哀愁を誘います。
フランスではアニメに限らず海外から輸入した番組が多く放送されていますが、この番組は逆にフランス国外に輸出されているようです。セリフがほとんどないので、誰でも楽しめるストーリーが受けているようです。
France5(チャンネル5)
こちらも国営放送のフランス・テレビジョンによる教育チャンネルです。今朝見た時はディズニーチャンネルらしき女子が好きそうなアニメを放送していました。画が可愛くて、セリフが多いのが特徴ですが、我が家の男子2人には不人気のため、ほとんどチャンネルを合わせることがありません・・・。(子どもたちに受けが悪いので写真が撮れませんでした・・・)
その他、有料のアニメチャンネル Guill (チャンネル18)
その他の有料のチャンネル18″guill”ではいわゆるアニメチャンネルでもアニメを見ることができます。
朝の時間帯に放送されているのはフランスのアニメ制作会社Xlilam(シーラム)が製作する”Zig et Shrako”という番組。
キュートな人魚マリナ(Marina)をあの手この手で捕まえようとハイエナのジグ(Zig)が追いかけまわすのをマッチョなサメのシャーコ(Sharko)が阻止するという無声アニメです。いわばトム&ジェリーと同じタイプのアニメで、「追う者」と「逃げる者」に「守る者」の要素が加わわり、毎日延々と、人魚とイノシシとサメの攻防が無限に繰り広げられます。ストーリーが極めて単純なのでフランス語がそれほどわからない我が家の子どもたちが一番好きな番組です。
確かに「ひつじのショーン」のようにコミカルで解りやすい展開で子どもが繰り返し楽しめる番組です。ただ親からすると無声アニメをずーっと見続けるのは残念すぎる・・・。ですが子どもたちには意味の解らない外国人の子どもたちにとってフランス語の番組を見るより、頭を使わなくて楽、というのも事実かもしれません。この辺りは海外での子育てにおいて悩ましいところです。
もう一つ、大体Zig et Sharkoとセットで放送されるのが同じシーラム社製作の”Oggy et les Cafards(邦題:オギー&コックリッチ)”というアニメ。
こちらもサメがネコにかわり、ハイエナがゴキブリたち(!)に変わっただけで、ほぼトム&ジェリーと同じ構成なのです(苦笑)
ただ、まだOggyのほうが私が好きなのは、Zig et Sharkoが毎回同じ島でドタバタをしているのに対して、Oggyは毎回物語の設定の次代や国が変わるのです。例えば、一番多いのはフランスの郊外と思われる住宅街が舞台なのですが、同じ町並みで19世紀末のベルエポック調の家や服装になったり、古代中国が舞台になったり、ルネッサンス時代の舞台にレオナルド・ダ・ヴィンチの発明のパロディーが出てきたり。はっきり言ってやっていることは変わらないのですが、今日はどの時代の何かなあ?という楽しみ方もあります。
パロディーが多く、大人もクスッと笑えるところは日本の妖怪ウォッチに通じる面白さがあるかもしれませんね。
なお2013年には映画化されていて、日本でもDVDを買うことができます。
あんまり頭を使わないことには変わりはないのですが、知らず知らずに歴史や異なる文化を目にできるので、まだ親としてはまだ「まし」かな?と思っています。
フランス人は朝はテレビに子守を任せる?
こうして改めてみると、共働きが多いフランスにおいて、保育園や幼稚園ぐらい向けの番組が朝の時間帯を占めているようです。ただあまりのアニメ枠の多さに、朝の忙しい時間を楽をするために子守の役割をテレビが果たしているのではないか?という気がしていまいます。親としてはテレビ見たさに早く起きてほしいというところかもしれません。
ちなみに後からわかったことなのですが、大人はテレビではなくラジオをつけて、聞き流ししながら朝の支度をしているのだそうです。あくまで私の推測ですが、テレビは子ども向け、ラジオは大人向けというすみわけがあるのかもしれません。
小学生向けのチャンネルは?
なお、逆に小学生以上向けの朝のアニメは皆無です。しつけが厳しいというお国柄、大きくなったら朝はテレビなんてみない、というライフスタイルなのでしょうか?
小学生向けのアニメも全くないわけではなく前述のguillというアニメチャンネルでは、夕方に少年向けのアニメが集中的に放送されています。
特に日本アニメはたくさん放送されており、妖怪ウォッチやポケモン、ベイブレードなど世界的に人気なアニメはもちろん、キョウリュウジャー、ニンニンジャーなどの歴代戦隊ものも外国版にアレンジされて放送されています。guillの雑誌は駅のKioskなどでも必ずおいてあることから、それなりに子どもたちに支持されているようです。小学生以上の子は夕飯までの時間に家でテレビを見るということなのかもしれません。
(2019年1月17日追記)
guillに変わって最近子どもたちのお気に入りなのが、国営放送フランステレビジョンのFrance4(チャンネル14)です。こちらも実は無料放送のようで、エンターテイメントに特化したチャンネルとなっています。夕方の時間帯向けは小学生向けのアニメが多く放送されていて、ニンジャゴーなどの日本人になじみのあるキャラクターの番組も放送されています。
というわけでフランスの朝のテレビ事情についてご紹介しました。今回は番組表による検証でしたが、実際にフランスの子どもたちがどんな番組を見ているのか、そもそも見ないのか?など疑問は残ります。特に我が家の大家は長男と同じ小学校3年生の娘さんがいましたが、テレビなんてものは見せない、という方針でした。しつけの厳しい家ではそもそもテレビは見せていないのかもしれません。
ちなみに、どのチャンネルで何が放送されているか、ざっくりみたーい、という方はこちらのwikipediaにまとまっていましたので参考にされてはいかがでしょうか。