フランス語を話せない親のための無料フランス語講座があるらしい

「マダムにご紹介したいプログラムがあるの」

夕方、次男を幼稚園にお迎えに行くと園長先生に呼び止められました。「ん?なんだろう??」と思って壁に貼ってある紙を見ると「Free French Course」と英語で書いてあります。

「へー、無料のフランス料理のコース?学校でパーティでもやるの??」なんておバカなことを思いましたが、改めて読むと親向けの無料のフランス語講座のようです。しかもその説明会が今日の18時15分から近隣の小学校であると。

「え!?これ、今日じゃん!!」

真面目な説明会のようなので、子どもを連れて行ったらまずそうな雰囲気。うーーん、今お迎えしたばかりの2人の子どもをどうしよう・・・と悩みましたが、最終的にはパパに早く帰ってきてもらうことにしました。

目次

教育省主催の無料フランス語講座

さて、仕事を切り上げて帰ってきたパパに子どもを託し、私は説明会会場になっている小学校に向かいました。学校の片隅にある小さな教室で説明会は開かれていました。

参加者は私の他、ヨーロッパ系のお母さんが一人とアジア系の夫婦が1組。フランス人の先生がフランス語と英語で交互にプログラムの内容を説明してくれます。

先生の説明によるとプロフラムはフランスの教育省が主催しているもので、

  • フランス語が話せない親のために無料のフランス語講座を開催する
  • 費用は無料
  • 授業は放課後に週2回×2時間
  • 期間は10月~1月(学校がバカンスの時はお休み)
  • 年末にフランス語の能力を証明するDELFを無料で受験できる

というものでした。

おー!これって結構いいんじゃないの!?

しかも講座のタイトルは

“OUVRIR L’ECOLE AUX PARENTS POUR LA REUSSITE DES ENFANTS”

(子どもの成功のために学校を親に開放する)

というもの。「子どもの成功のために」とか言われちゃうと親心をくすぐられますよね~。

テキストもこの講座向けに作られたもので、単なるフランス語の勉強だけでなく、学校生活や、子どもが熱を出したとき、役所での手続きなど、子どもが学校に通う上で出くわす場面を中心に学べるような構成になっています。

無料講座を提供する目的

なぜフランスの教育省がこのような講座を無料で提供するかというと、ずばり「移民」の底上げでしょう。

教育省のホームページによるとこのプログラムを通じて親が身に着けてほしいスキルとして

フランス語の理解(理解、会話、読み書き)

■子供の学校教育に関する書類(学校の報告書、連絡用のノート、学校の時刻表など)を理解する。

■子どもの学校教育、親と教師の会合に関する口頭での交流に参加する。

共和国の価値とフランス社会におけるその実現の知識

■自由、平等、男女平等、兄弟愛、世俗主義、教育の権利など、共和国の価値を適切にすること。

■日常生活の暗黙的な社会的使用の中で自分自身を見つけ出す方法を理解し、知ること。例:予約をしたり、他の人に話したり、礼儀のルールを付けたりする。

生徒と保護者に対する学校の機能と期待に関する知識

■特に、様々な関係者の役割を知ることによって、学校との共同教育の観点から協力する

■情報と表現に対する権利に効果的にアクセスする

■子供たちの学校教育を監視し、学校と学校の規則、学校の文書(掲示板、日記など)を理解できるようにする

Dispositif Ouvrir l’École aux parents pour la réussite des enfants au titre de l’année scolaire 2017

先生が説明してくれたのは、「親がフランス語を学ぶ姿勢を子どもに見せれば、子どももフランス語を学ぶことが大切なことであると思うようになる」ということです。つまり、親がフランス語に不自由しなくなり早く学校に慣れることで、その子どもも前向きに学校に通い、学ぼうとするということです。

外国に住んでみて痛感するのはやはり日常会話は数年でキャッチアップできても、読み聞かせなどを現地語で家庭ですることが非常に難しいということです。家庭内で居住地の言語に触れる機会が少ないほど、高等教育に進むのが難しいのだろうなと、容易に想像できます。

それでも完璧にその国の言葉を習得できなくても、せめて親が先生たちやその他の保護者とうまくコミュニケーションを取り、学校に積極的に関わることができたら、子どもたちの学ぶ意欲をつなぎとめることができる、というのが教育省の目指していることなのでしょう。

実際、次男のクラスに最初にあいさつに行ったとき、ひとり移民の生徒が授業に参加せず、教室の後ろで眠そうにしていました。幼稚園児なので、たまたま午後の時間で疲れてしまっただけかもしれません。しかし、言葉の問題でついていけない子どもは少なからずフランス全土で問題になっているのだろうと思います。公費をかけてでもフランス語を母語としない家庭のサポートが必要になっているということなのですね。

私自身も次男が早くフランスの幼稚園になじめむために、自分が早く学校の先生と良い関係を作らねばと思っていたところなので、渡りに船です。

さあ、プログラム参加に向け、放課後にベビーシッターをしてくれる人を探さねば・・・。