フランスに来て垣間見た「頑張っても上がれない社会」

フランス大統領選挙を前にパリのシャンゼリゼ通りでテロがありました。フランスに来て間もないため、多くの事を語ることはできません。それでもこの国の抱えている問題を垣間見て感じたことを書きます。

目次

頑張っても上がれない社会

フランスではアメリカやイギリスと同様に多くの移民をみかけます。スーパーの店員、ホテルのガードマン、子どものスクールバスの運転手さんとセキュリティのガードマン、ゴミ収集の人。みんな挨拶はにこやかに「ボンジュール」と言ってくれます。お別れの時も必ず「オルヴァー」。移民が社会に溶け込み、フランス人として働いている人が大勢いるようにみえます。

ところが、街に無数あるカフェに目を向けると、そこに座っているのは白人ばかり。私が来て日が浅いからでしょうか?パリの郊外の移民が多いエリアならアフリカ系などの移民もカフェの表の席に座るのでしょうか?街には沢山の移民が歩いているのに、カフェの一等席には移民を見かけないのは不思議な光景に思えます。

こうした光景は仕事の場でもはっきりあるようです。冒頭に紹介した街で出会う仕事は、いわゆるブルーカラーになるほど移民率が高くなるように見えます。毎朝お世話になるスクールバスの運転手やガードマンは100%アフリカ系の移民です。どちらもきちんと職業訓練を受け、子ども達にも保護者にもにこやかに対応してくれる素敵な人たちです。この人達なら毎朝子どもを安心して学校に連れて行ってもらえると思えます。

それでも街でみかける人種の比率からすると100%アフリカ系というのは正直言って違和感を感じるのです。この国には頑張っても上がれない「ガラスの天井」がアメリカやイギリス以上にあるような気がしてなりません。

フランス人ですら出世できない!?

フランスはバカンス天国です。日本人からすると呆れるぐらい有給休暇をバカバカ使って休んでいます。でもそれは「頑張っても出世はしないから割り切って休んでいるのだ」という人もいます。

フランスではどこの大学を出たか?でほぼ出世コースが決まってしまう傾向が強く、入社してから育てるという考えはあまり無いのだそうです。だからどんなにポテンシャルがあっても、フランスの特定の大学を出ていない人がフランス企業の中で上がって行くことはできないのだとか。そうすると一般のフランス人からすると頑張っても無駄なので、仕事はそこそこにライフを楽しむ、という発想になるのだそうです。

ひと握りのエリートが猛烈に働きかけ富を生み出し、それを還元する形でフランスという国が回っていると聞き妙に納得してしまいました。

日本も人の事を言えるだろうか?

こうして書くとフランスがいかにも閉鎖的な社会に見えます。でも歴史的な背景もあり他民族を受け入れ共存を模索しているという点では日本よりずっと先を行っています。

日本は一見平和で差別が無いように見えますが本当にそうなのかフランスに来てわからなくなりました。グローバルな超大企業を除いて、

  • 日本国籍
  • 男性
  • 見た目が日本人風
  • 名前が日本人風

では無い日本企業の役員がどのぐらいいるでしょうか?ダイバーシティが叫ばれている時代ですから社外役員等で外国人や女性を招聘している会社は増えています。でもそれは数合わせでお茶を濁しているに過ぎないのでは無いでしょうか?いわゆる管理職などのマネージャー層に広げたらどうでしょうか?女性は辛うじて増えているかもしれません。

例えば同じ日本人でも障がい者はどうか?病気や事故がきっかけで障がい者になっても変わらず働きかけ続けられるのでしょうか?街を見渡すと24時間営業のコンビニや過酷な労働で知られる牛丼チェーンの店員が外国人労働者ばりのお店もあります。これ自体は悪いことではありませんが、もっともっと外国人が増えたらフランスと同じ光景が日本にも普通になるかもしれません。

その時日本はどうするのでしょうか?多様なものを受け入れることができるのでしょうか?引き継ぎ門を閉ざし続けることはできるのでしょうか?

フランス社会が多様性という問題にうまく対応できているとはとても思えません。でも少なくとも日本は多様性への対応という点ではまだ入り口に立っているに過ぎない。ダイバーシティという言葉が流行っていますが、ダイバーシティはインクルージョン(受容)とセットです。

私自身はそもそも多様性の何たるかすら、実は未だ未体験なのだと思い知るのでした。